コラム

コラム

みずほ銀行・三井住友銀行 VS東京国税局  第1ラウンド(第1審)の結果

昨年、勃発したこの騒動。

ことの発端は、2016年にさかのぼる。

簡単に言うと消費税の不正還付を行ったとして、東京国税局が、とある 免税店運営会社 に104億円の追徴課税処分をくだした。その追徴課税処分当日に、当事会社の所有する本社不動産に対してみずほ銀行、三井住友銀行の2行が50億円の根抵当権を設定。その後、国税局が同じ不動産を差し押さえ。担保物件売却の際の優先権は課税処分以前に抵当権を設定した債権者にある為、国税局としてはこの担保権設定が国税徴収を妨げる詐害行為だとして、担保抹消を求めて2020年6月に2行を提訴した、というもの(この2行の登記で、国税側の徴収見込み額が7億6千万円から、約3300万円に減少したとのこと)。

流れを分かり易く書くと

  1. 免税店運営会社が2016年~17年の一年間で仕入れ時に負担した消費税約88億円の還付を申告
  2. 2016年3月 みずほ銀行、三井住友銀行の2行は還付金を担保にして、最大計50億円を融資する契約
  3. 2016年9月 当該免税店運営会社への税務調査開始
  4. 2017年3月 2行が融資契約に「消費税の還付額が50億円に満たない場合は、本社ビルなどに根抵当権を設定する」旨の条件を追加
  5. 2017年6月 免税店運営会社社長から2行に消費税の還付はなくなり、追加の納税が発生する旨の説明(26日までに)。
  6. 2017年6月 東京国税局が約104億円の追徴課税処分。同日、2行が根抵当権を登記(30日)。
  7. 2017年9月 国税局が本社ビル差し押さえ
  8. 2020年6月 国税局が2行を東京地裁に提訴

この裁判の結果が、9/8に出ました。

東京地裁の判断は、みずほ、三井住友銀行が敗訴。追徴課税当日の担保設定「不当」とし、国側の請求を認め、銀行側に担保権の抹消を命じました。

両銀行側は「融資金を回収するための適切な行為で問題はない」との主張でしたが、判決は「意図的に税務当局の徴税権を害する行為」と指摘し、根抵当権を取り消し、抹消登記手続きを行うよう命じた、ということです。

銀行側の主張はもっともだと思いますけどね。銀行側にも当然ながら利害関係人がいて、回収をするのも仕事の一環で、しかもそれは当然の行為なわけで、国税債権のために回収手段の一つである、根抵当権設定を見送る、という判断は通常はあり得ないと思いますが。

両銀行側が、この免税店運営会社の不正に当初から気づいていたにもかかわらず、というのなら話が違ってきますが、実際はどうだったんでしょうかね。話の流れから見て、当初は消費税88億円が本当に還付されるものとして総額50億円の融資契約を結び、実際に融資も行ったものの、国税調査が入り、雲行きが怪しくなってきたから慌てて「還付金が50億円に満たない場合は本社を担保に」という文言を契約書に追加して、いよいよ回収が困難、という結果が見えたから実際に担保設定を行った、ということのようですが、その判断が遅すぎた、ということなのでしょうか。仮に、50億円の融資を行った段階で還付金を担保にではなく、本社ビルを担保に入れていたとしたら何も問題はなかったはずです。とはいえ、88億の還付金が戻ってくるという話の中で、50億の貸付金を担保とすれば、その還付金で十分ですので、別途、他の物件を担保に、ということにはならないし、回収を考えると還付金を担保に取らず、不動産を、ともまずならないとは思いますので、あくまで仮に、の話です。

次に、国税調査が入った段階で、担保を還付金から本社不動産に切り替えていたとしたらどうでしょうか。この場合でも、まだ追徴金は勿論のこと、追徴となるかどうかも確定していない段階での判断として、詐害行為と言われることは無かったと思います。とはいえ、88億はなくても、50億くらいの還付なら、と考えると、担保物を切り替えて、という判断には中々ならないでしょう。

たらればを言っても仕方のないことですが、問題は、やはり、実際に還付金はなくなり、追加納税が発生するということを当事会社の社長から説明を受けた後で、慌てて設定の準備をしたとみられるような流れになってしまったことかもしれません。この流れが詐害行為として映ってしまう結果になったのかもしれませんね。しかも、追徴課税処分決定の当日に担保設定登記申請となると、心象もあまり良くない気はします。もう少し前(がどのくらい前なら?という疑問はありますが)に担保を切り替えられていたら、結果は違っていたかもしれません。

とはいえ、まだまだ第1審。国税側としては主張が認められて、妥当な判決、というところでしょうが、両銀行側としては主張が認められず、不服でしょうし、判決内容を精査した後におそらくは控訴するでしょうから、この争いに決着がつくのはまだ先の事かな、と思います。

担保設定登記、という日常の業務が絡んでいる問題でもあり、注視していきたいと思います。

お問い合わせ

どのようなご相談・ご質問にも、お応えできる環境を整えてお待ちしております。どうぞお気軽にご相談ください。

TEL : 06-6360-4393

事務所
ページトップへ